『危機 現代へのマルクス主義の貫徹』

 拙著『危機 現代へのマルクス主義の貫徹』(著者発行、2015年11月刊)を出版しました。書泉グランデ(神田神保町)4階、模索舎(東京都新宿区新宿2-4-9)、ナカムラヤ(群馬県太田市本町14-27)で売っています。読んでください。

 

 はじめに
 二〇一五年の八月、日本では猛烈な暑さが秋をおもわせる涼しさに一転したそのときに、中国発の世界同時株安の衝撃が、あらゆる国々に走った。
 深刻化する事態を打開するために九月初めに開かれた、主要二〇カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、これまでとは異なった様相を呈した。
 せまりくる経済危機におびえた日本・アメリカ・EU(欧州連合)諸国の権力者たちは、悪者にしたてあげた中国に、「構造改革」をせまった。権力者としてはあたりまえのことではあるとしても、彼らは何と厚顔無恥なのであろう。
 リーマン・ショックの自国への影響をのりきるために、中国政府は、四兆元という巨額の資金を投じた。この資金にささえられた中国経済に、危機に瀕したこれらの帝国主義諸国の経済は依存してきたのであった。ところが、その中国経済の破綻があらわとなるや否や、日本などの諸国の権力者たちは、中国での、ふくれあがった過剰設備と不良債権をやり玉に挙げだしたのである。だが、現下の中国経済に胚胎している諸矛盾は、中国やロシアなどの旧ソ連圏諸国を自己のうちにのみこんだ帝国主義世界経済、バブルの膨張とその破裂という死の痙攣を引き起こしているこの経済の諸矛盾が、中国経済に内在化されたものにほかならない。帝国主義諸国権力者たちは、自分たちがうみだしたものにたいして、それに自己の影をみるがゆえにこそよりいっそう、自己保身と憎しみをこめて、非難しているのである。
 新興諸国の雄を誇った中国の威信は地に堕ちた。中国経済は、株価の高騰というバブルとその破裂、そして不動産バブルとその崩壊、という事態にみまわれるほどに・腐敗し腐朽した構造をなすことがあらわとなったのである。
 この構造が形成されたのは、現存中国国家がみずからの「改革・開放」という名の資本主義化政策を、中国の経済的現実に、まさに貫徹したことにもとづく。この国家は、破綻した・それまでのスターリン主義政治経済体制を破壊し、それを資本制的政治経済構造に変質させた。それとともに、スターリン主義党=国家官僚や経済官僚であった者たちは、みずから、資本家的官僚あるいは官僚資本家に成り上がり、労働者たちをプロレタリア=賃労働者につき落としたのである。このことこそが、悪の根源なのである。
 いまこそ、スターリン主義の破産を、スターリン主義そのものの誤謬と犯罪性を、よりいっそう深くほりさげて分析しあばきださなければならない。
 この社会的現実になげこまれそこから決してのがれることのできないわれわれ、この現実にたちむかいこれを変革することを意志する実践=認識主体としてのわれわれは、スターリン主義の破産の根源をえぐりだし、マルクスのマルクス主義を、危機をあらわにしている現代世界に貫徹するのでなければならない。
 労働者・勤労者・知識人・学生たちが、私の探求に対決されんことを、願う。
                            二〇一五年九月六日
 

 『危機 現代へのマルクス主義の貫徹』  目次

 はじめに

Ⅰ 二〇一五年の暑い夏

〔1〕 勃発した世界同時株安の意味するもの

  一 リーマン・ショックののりきりの破綻
   生起した中国発の世界同時株安
   世界的なバブルの破裂
  二 破産した中国経済
   中国政府のあがき
   中央・地方政府が膨張させた不動産バブル
   中国の資本主義化の帰結
  三 ゼロ金利政策の維持においこまれるアメリカ・日本
   シェール・バブルの破裂
   危機の弥縫の最先端をいく日本の経済と政府

〔2〕 シェールオイル・ガス生産企業の経営破綻

〔3〕 二一世紀初頭の思想問題

  一 二〇〇八年の経済危機をどのように捉えるのか
   現実を変革する実践的立場の欠如
   金融機関とインターネットの美化
  二 この本を製作する私の電脳的諸作業
   原稿を本にするために
   著者発行という形態
   データ製作(=組版)をも自分で
  三 自己崩壊ののりきりを打破せよ
   ソ連崩壊に直面しての自己崩壊
   宇野弘蔵の弟子たちの内面の崩壊

Ⅱ アジア的生産様式論序説

〔1〕 マルクスの晩年のノートがしめしているもの

〔2〕 人間社会の発展にかんする研究を深化するために
     ――「アジア的生産様式」というマルクスの規定をいかに継承すべきなのか――

  一 『家族、私有財産および国家の起原』の展開を今日からどのように捉えかえすべきなのか
  二 古代エジプトでは社会的生産物の再生産はどのようにおこなわれたのか
  三 奴隷制のギリシャ社会に先行するミケーネ社会
  (付) ポランニーの経済人類学

〔3〕 古代社会の生産様式を分析する基準となるもの
     ――太田秀通『奴隷と隷属農民』におけるミケーネ社会の分析と関連して――

  一 アジア的生産様式という規定を基礎づけるための苦闘
  二 ミケーネ社会はどのような経済構造をなしていたのか

〔4〕 ミケーネ社会の経済構造をどのように分析すべきか

  一 王国の構造
  二 pa2-si-re-u=バシレウス
  三 da-mo=ダーモス
  四 王国における社会的総生産物の再生産

〔5〕 アメリカ権力者にわが身を売ったウィットフォーゲルの「東洋的専制主義」論

  一 〝東洋的専制国家の樹立をめざしたマルクス・エンゲルス・レーニン〟像の捏造
  二 ツァー専制国家を弾劾したマルクスの曲解
  三 時代を超えたアジア社会分析

〔6〕 二一世紀現代の中国・ロシアをアジア的生産様式の今日的形態と捉える主体の問題

Ⅲ 現代世界に〈反スターリン主義〉を貫徹せよ!

〔1〕 〈反スターリン主義〉の破棄

〔2〕 過渡期社会のける「労働の価格」という規定についての疑問

 (その一)
 (その二)

〔3〕 『資本論』の展開の裏面にあるものをつかみとる論理
 

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