ウクライナ東部に親ロシア武装勢力の権力が樹立

 ウクライナ東部のドネツクおよびルガンスク両州のみずからの支配地域において、親ロシアの武装勢力は、十一月二日に選挙を実施し、自分たちの政治勢力からなる、それぞれの「人民共和国」の首相および議会を選出した、と発表した。ロシア外務省はただちに、この結果を認める声明をだした。十月二十六日のウクライナ議会選挙でみずからの基盤を確立していた大統領ポロシェンコは、武装勢力が支配する地域に「特別な地位」をあたえる法律を取り消す(「停止する」という表現であるとも言われている)方針をしめした。すなわち、武装勢力の支配に付与した合法性を、彼は剥奪した。けれどももちろん、武装勢力を武力的におしつぶしこの地域を奪還する軍事力をこのウクライナ権力者はもってはいないし、彼にはその意志もない。ここに、両州のそれぞれの地域に、ロシアの軍隊をバックとする・親ロシア武装勢力の権力が樹立された、といえる。プーチンのロシアは、みずからが占領していたこの地域を、ポロシェンコのウクライナから切り離したのである。
 これより前の十月三十日には、ロシア・ウクライナ・EUの三者の協議において、ロシアが今冬のガス供給を再開することにかんする合意がなされた。合意内容は、ウクライナがガス代金を前払いすることを条件に、ロシアはウクライナに来年三月末までのガスを供給する、一〇〇〇立方メートル当たりのガス価格については、年内は三七八ドル、来年の一~三月は三六五ドルとする、というものであり、ウクライナの過去の滞納ガス代については、ロシアが今年四月に値上げする前の二六八・五ドルで計算した総額三一億ドルを年末までに二回に分けて支払う、ということをウクライナは約束したのであるが、ロシアは、三一億ドルは総額ではなく、総額は五三億ドルである、と主張し、残りを二〇一五年に支払うように、ウクライナに要求したのである。
 プーチンのロシアは、EU諸国による経済制裁のこれ以上の強化を回避するために、ポロシェンコのウクライナおよびEUに、あたたかなふうを装った手をさしのべつつ、ドネツクおよびルガンスクの過半の地域を、ウクライナ権力の支配下から切り離したのである。
                                 二〇一四年一一月五日