GDP二期連続マイナス――アベノミクス破綻の露呈

 内閣府は十一月十七日に、七~九月期の国内総生産(GDP)の速報値を発表した。実質GDPは、四~六月期と比べて〇・四%減(年率に換算して一・六%減)となった。前期比一・九%減(年率にして七・三%減)というまでのマイナス成長を記録した、消費税率引き上げ直後の四~六月期よりもさらに生産は落ちこんだのである。GDPの約六割を占める個人消費は前期比〇・四%増であったが、これは、前期比五・〇%も減となった四~六月期に比してのものであり、大幅に落ちこんだ水準からほとんど回復しなかったといってよい。消費増税分に比べて、額面上の賃金上昇でさえもが微々たるものでしかなかったのであるからして、それは当然のことである。設備投資は〇・二%減、住宅投資はさらに悪く六・七%減となった。財貨・サービスの輸出は一・三%増、同輸入は〇・八%増であったことからするならば、内需の落ち込みはきわめて大きいのである。生産のこのような減退は、アベノミクスが破綻したことの露呈にほかならない。
 こうした数値は投資家たちの想定外であったことからして、彼らは株式の売りに転じ、東京株式市場の日経平均株価の終値は、前週末比五一七円〇三銭安の一万六九七三円八〇銭というように、今年二番目の下げ幅を記録した。円相場もまた、この発表の直後には一時、一ドル=一一七円台にまで下落した。そのあと、夕刻には、前週末よりも少し円高の一一六円を切る水準にまで戻した。
 十八日には、首相安倍は、二〇一五年十月に予定されている消費税率一〇%への引き上げを十八か月先送りし、これへの信を問うために二十一日に衆議院を解散する、ということを表明した。この選挙は、アベノミクスというみずからの政策の破産をおおい隠すためのもの以外のなにものでもない。
 速報値のこの発表からとらえかえすならば、十月三十一日の日銀による追加的な金融緩和策の決定は、生産が深刻な減退をしめしていることを公表するよりもまえに株高を演出し、もってこれまでの金融緩和策がなにがしかの成果をもたらしているかのように見せかけるためのものであった、といえる。
 アベノミクスは「大胆な金融政策」「機動的な財政出動」「民間活力を引き出す成長戦略」の三本の矢からなる、とされる。こうした諸施策の日本の経済的現実への貫徹は、巨大企業が利益を得る金融バブルの膨張と労働者・勤労大衆の労働苦・生活苦をもたらすだけなのである。
 諸経済指標にかんして、安倍政権発足時と現在とを対比するならば、日経平均株価は一万二三〇円から一万七三三四円(十一月十八日)に上昇した。これによって大独占体や投資家が儲けた。がしかし、このあぶくは早晩破裂するであろう。円相場は一ドル=八五円から一一六円に下落した。この円安によって、輸出の比重が高い大企業は利益を増やしたのであったが、原材料を輸入にたよる度合いの大きい中小企業は苦境に立たされた。消費者物価指数は前年同月比〇・二%下落から同三・〇%上昇に転じた。この数値は消費税率引き上げ分を含むものであり、この物価上昇は民衆を苦しめただけであって、デフレからの脱却をしめすものでは何らない。市場に大量に供給された通貨は、金融的利益を得るために投機的に運用されたにすぎず、企業の設備投資のためには活用されなかったのである。これは、次のことからして当然である。実質賃金は前年同月比一・六%減から同三・〇%減へと大幅に下落したのであり、消費支出は同〇・七%減から同五・六%減へと落ちこんだのである。有効求人倍率は〇・八三倍から一・〇九倍へと上昇したのであるが、これは、労働者たちの賃金を徹底的に切り下げておいたうえで、そのように搾取する対象をさらに増やした、ということなのである。いま見てきたように、現在的にもたらされているものからしても、アベノミクスの階級的性格は明らかなのである。
 「大胆な金融政策」とは、独占資本家と投資家の金融資産を増殖するために株式相場をつりあげる、という金融バブル膨張策である。「機動的な財政出動」とは、建設業者などの大企業に国家財政資金をふりまくものである。「民間活力を引き出す成長戦略」とは、法人税減税にしめされるように独占資本家の懐にたっぷり利益をながれこませるとともに、「労働分野の規制緩和」と称して労働者たちによりいっそう過酷な労働を強いるものなのである。こうした諸施策を日本の国家権力者がわが国の経済的現実に貫徹した帰結が、いま現出している深刻な生産の減退なのである。
 今日では、ソ連の崩壊と労働運動の圧殺という諸条件のもとで、諸独占体とその利害を体現する諸国家は、労働者・勤労大衆の賃金を徹底的に切り下げかつ彼らに超長時間・超強強度の労働を強いることをとおして、資本の過剰が露呈するのを回避してきたのであり、アメリカ・日本・EU諸国のあいだで相乗的に増やしてきた流通通貨を、――アメリカでのサブプライムローン・バブルの破裂のあとには――北アメリカでのシェールガス・オイルの生産に注ぎこみ、この部門への投資のねずみ講的拡大というかたちでバブルを膨らませてきたのである。シェールオイルの増産にもとづく原油価格の下落という諸条件のもとで、このバブルの破裂がせまりつつある。この破裂が現実化するならば、アベノミクスなどというものはその提起者もろとも吹き飛ばされてしまうことになる。
 現下の賃金切り下げと過酷な労働の強制と諸攻撃にたいする労働者・勤労大衆の闘いを組織し展開することは、急務である。
                                  二〇一四年一一月一九日